いつもの如く報告が遅れましたが、11月13日に以前森林見学をさせて頂きました、九州電力の社有林を管理されている九州林産さんの湯布院事務所に行ってまいりました。
九州林産さんは2005年に日本で20番目、九州で2番目にFSC森林管理認証を取得されています。 △ ▲ △ FSC森林管理認証は、環境保全の点からみて適切で、社会的な利益にかない、経済的にも持続可能な森林管理を推進することを目的として、「FSCの10原則と基準」に基づき、「適切な森林管理」を認証する制度です。 認証された森林の林産物でできた製品には、FSCのロゴマークがつき、消費者に対して、認証された製品であることを分かりやすく伝えます。認証された製品が市場に増え、購入が進むことによって、適切に管理される森林が守られ、森林の破壊や劣化を招くことなく、木材消費が進むという、森林管理者から、木材、木材製品の消費者に至る様々な関係者を一体化しようとするシステムです。 △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ FSCの認証期間は5年間で、認証取得後も1年に1回監査を受け、改善要求事項を中心に森林管理の状況が継続的に規準に適合しているかを確認します。 その年次監査が11月の13、14日の2日間にわたって公開で行われるということで、 三宅建築工房 の三宅さん、幹杉さん、そして薫スギの3名で監査の様子を見学して参りました。三宅建築工房のお二人は家造りの観点から杜(森)を考える「MORI・ねっと」を立ち上げ、独自にも森林見学等のイベントをやっていらっしゃるので、今回の監査見学のお誘いに飛びついて下さいました。 九州林産の事務所へ到着すると「スギダラさん、いらっしゃいました~。」と、にこにこしながら林業課の木下さんが迎えて下さり、相棒(イケ杉さん)欠席でやや不安な私の緊張感もほぐれました。 監査に入る前に、今回の年次監査の見学者の為に会社の概要やFSCのことについて林業課の桑原課長さん、木下さんよりご説明を戴きました。 見学者は大分県の振興局、臼杵市、日田市の職員の方達、林業関係者、私達を含めて15名ぐらい。皆さん仕事で来られている方達の中で、いかにも「一般人」という感じで、しかも「ウキウキ感」漂う私達3人はちょっと浮いている感じ・・・。でもやる気満々です。 皆でそれぞれの車に乗っていざ現場に出発。 最初に向かったのはヒノキの主伐地。そこで作業されている方達に監査の方が労働条件についてや、怪我をしていないか、安全面はどう気を配っているか、地元の方なのか、他と比べて働きやすいか、といったことをインタビューをしています。また、同時に作業員の作業着にもチェックが入ります。皆さん安全面に気を配り、防御服を身に着けていらっしゃいます。 どこのスポットで監査をするか、ということは伝えず抜き打ちで行います。インタビューしている間は監査官、作業者との間で話しがなされ、その間は口出ししないよう管理者は離れており、作業者が話しやすい状況にします。 こういう作業者の聞き取りはFSC10の原則の一つである 『森林管理は、林業に従事する者と地域社会とが、長期にわたり社会的経済的に十分な便益を得られる状態を継続あるいは向上するものであること 』ということを確認するものです。 同時に森林の状態をチェックします。監査官は一通り見て回ると、気になった点、良かった点をその場で説明して下さいます。 九州林産では間伐サイクルは8年に1回。素人目には綺麗なのですが、この現場は前回の間伐から5年を超えているので少し森林が暗くなっているとのご指摘。 今後間伐のサイクルを短くすることを検討されているそうです。 また、九州は台風が多いので、風倒木対策の為に風の通り道を作っているか、といった地域特性にあった観察も行われます。 九州林産では5年毎の施業計画がしっかり作られ、また伐採するところ、しないところ、広葉樹に転換するところ、レクリエーションの場として利用するところ等ゾーニングを設けて計画的に施業がなされています。 FSC10の原則の 『調査された基礎データに基づき、森林の管理が計画的に実行されている』がしっかり守られています。 →右はなんやら切り株に注目する三宅社長。 次にまわった所もヒノキの伐採地。「スギダラさんに悪い(笑)」なんて言われましたが、とんでもありません。杉じゃないと駄目、なんてことはもちろんなしです。 ここではご年配のご夫婦が二人で作業されています。ここでも先程同様の質問から作業する場所は家から近いか、一日どれぐらい伐っているか・・・等のインタビューがなされます。 こちらのご夫婦は農業と兼業でされているとのこと。二人で助け合って仲良く仕事をされている様子が話されている様子からほんわかと感じられて、監査官の方も「お二人のお話を聞けただけでも来た甲斐があった。」とおっしゃっていました。監査官の方達もとても温和でユーモアがあり、お会いする前の監査官という勝手なイメージ (スーツをばっちり決めた、鋭い眼光の怖そうな人←テレビの見すぎ)とは大違いでした。和やかな感じで監査は進んでいきます。 左は前回の森林見学からずっとお世話になっている林業課の木下さん。若いのに山を管理されているのです。かっこいいー。しかも可愛い!きっと会社でアイドル的存在のはず。 右は現場を撮影中の幹杉さん。会社の肩書きは「わくわくクリエーター」。これまたかっこいいー。 そしてまた切り株を見ている三宅社長。どうやら切り株好きとみた。 「あー、スギダラさんだったのですね。合原さんから聞いてます。」と大分県西部振興局の藤本さん達と名刺交換する薫スギ。ここでもバルスギさんネットワークの広さを実感。 スギダラ名刺を見た藤本さんが「これ、スギダラのマスコットキャラクターですか?」と名刺に印刷された杉九を指差して聞かれたので、慌てふためいて「北部九州限定です。」と答えました。このキャラが全国のスギダラのマスコットと勘違いされたら申し訳なさ過ぎます。 最後に回ったのは『ます釣りの郷』。 森林見学の時に昼食を頂いたところですが、リニューアルされておりました。しかもいい感じに紅葉になっており、5月に来た時とはすっかり雰囲気が変わっています。 左はわさび栽培がされています。前回の昼食時はとりたてわさびでマスのお刺身を戴きました。これがまた美味。 右は「ます釣りの卿」というぐらいですから、マスはたくさん泳いでいますが、チョウザメまでいます。 山林管理だけではないのです。 紅葉の綺麗なスポットにベンチと黒板が見えます。 九州林産の皆さんの手作り。杉で作られています。 11月3日に九州電力の環境活動の一つの「みらいキッズクラブ」という小学生を対象とした体験学習で枝打ち体験をし、その時に手作りのテープル、椅子、黒板を作成して林間学校スペースを設けたそうです。その時「森の役割」というテーマで木下さんが講師役を勤められたとのこと。子供達には大変評判がよく、なんとこの体験学習、応募があまりに多くて抽選になったそうです。たくさんの子供達が山に興味をもってくれているのですね。 →右のベンチにはFSCマークがついています。 こういった森林管理以外の魚の養殖やレクリエーションの場としての利用等は、FSCの原則である『豊かな収穫があり、地域からも愛され利用されている森である』 『多くの生物がすむ豊かな森である』ということの一つにあてはまります。 ここまで見て1日目の現場審査は終了しました。2日目は午前中現場審査、午後から書類審査があったのですが、残念ながら平日ということもあり、1日目だけの見学となりました。 後から木下さんから聞いたところによりますと、2日目の書類審査も、いい結果が得られたそうです。 FSCの指摘事項には次のような2段階のレベルが設けてあります。 『条件』・・・一定の期間(監査までの1年間)に必ず是正されなければ、認証を取り消されるとい う最も厳しい指摘事項。 『勧告』・・・認証の取り消しはないが努力が見られなければ、条件への格上げがされる事項。 前回の審査で、社有林は条件1、勧告11件の指摘を受けていたそうですが、今回は条件なしの勧告8件という結果だったそうです。 勧告の内容は、九州電力が公益性を有す会社である以上、これからも地域貢献を続けていってください。林地残材を減らしてもっと材の利用を進めて行ってください。風害のないような山造りをつづけていってください。社有林の情報をもっと広く知ってもらえるように、情報を公開していってください。というような内容でした。 こういった内容に関しては、様々なやり方が考えられ、ここまででいいという線引きがない為、今後もこういった勧告は消えることはないだろう、ということでした。 ただ、こうして指摘で上がっていることで、手を抜けないという意識が生まれるし、その努力を毎年見ていただける、また評価をしていただける、このことが、良い意味で励みになっていっていると木下さんをはじめ、九州林産の皆さんは感じていらっしゃいます。 今回このFSC年次監査に立ち会って感じたことですが、まずはFSCの認証のハードルの高さに本当に驚きました。違法伐採ではない、というだけではなく、作業者の労働条件、安全対策、 生産性と生態系のバランス、・・・全てにおいて高い管理能力が求められています。それをクリアされている九州林産の山を見られたこと、年次審査に立ち会うことができたこと、大変勉強になりました。 九州林産は九州電力の社有林を管理していますので、役割も立場も他の林業会社とは違います。材を売って利益を出すことはもちろんですが、同時に環境、社会に対する高い貢献度も要求されます。ですが、同時に理想を形に出来る力もあります。九州林産だから出来ること、そのことをしっかりと多大な労力をかけてやっていらっしゃる、その姿勢は本当に素晴らしいと思います。林業課の皆さん、特に木下さんの熱い気持ち、皆さんにお聞かせしたいです。こういう方がいたら、山の将来も明るい、そう思えます。 ちなみに。FSCを取得して木材の付加価値は上がったのか、よく聞かれるそうです。価格はさほど上がっていないそうですが、確実に取引量が増えたとのことです。多分皆さんもFSCマークをついた商品を目にすることが今後でてくるのではないかと思います。 見学後、特に子供達に対して行った体験学習に感心されていた幹杉さんも写真と共に次のような感想を送ってくださいました。 「私たちがああいったところに遊びにいって、直接的に森林に対して何かできるかといえば、何もできないと思ってますが、森にはいって「気持ちいいな、木はこんなに大きいな、土の感触きもちいな、緑っていいな、紅葉ってきれいだな」と、こういう感情を持つ人が広がれば森林に対しての理解も広まり、そういうことはとても意義があると思います。まずはそれだな。と感じてます。」 そして九州林産の木下さんは、この審査にたくさんの人が来てくれたことをとても喜んで下さいました。そしてこう話してくれました。 「林業の仕事と言うのは、ずっと同じ仕事が100年以上続いていく気の長い仕事です。いつも同じ仕事をしていたら慣れてしまって、新しい発見とか、取り組みとかなかなかやりにくい状況があったりするのですが、毎年第3者の目で見てもらえることは、いつも見ている山の違った面を垣間見れるとてもいい機会なんです。 FSCの効果って、製品にラベルを付けられる以上に、管理側の意識の向上にあるのかもしれません。これからも頑張ります!」 心強い!木下さんは毎年監査が楽しみでしょうがないとおっしゃいます。それは監査の度に指摘事項と共に色々改善をしながら、新しい提案をされるので、よりよく森を管理していけるようになるからだとか。どんどんハードルは高くなるけれども、次はどんなことができるのか、それが楽しみなのだととても前向きに考えていらっしゃいます。 この姿勢見習いたい。先日も会社の監査で呼ばれる度にイチイチどきどきしていたOLは反省しきりです。 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ 九州林産の平家山林の見本林。85年生の杉。美しいです。
by sugikyu
| 2006-11-26 21:55
| 杉ツアー
|
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